はじめに
技術士に求められる資質能力について理解を深めたツトムさんは、技術士第一次試験の適性科目では「技術士の義務や責務」というものも問われるということでそれらについて話を聞くことにしました。
今日のテーマ
- 技術士法に定められた3義務2責務とは何ですか?
- 「義務」と「責務」は、技術者の行動にどう影響しますか?
- これらが定められた背景は何ですか?
コーチング対話
ツトムさん適性試験では技術士の義務と責務について問われるということですが、
そもそも「義務」と「責務」の違いは何でしょうか?
分ける必要があるのでしょうか?



違和感は自然です。
既にネットでそれらの意味を調べていると思いますが、
その説明をしてみてもらえますか。



はい。
「義務」というのは「義」という文字が入っていて、
「責務」には「責」という字が入っています。
これらを説明すると以下のようになります。
これを見てもあまり差が明確ではないですね。
| 漢字 | 意味 |
|---|---|
| 義 | 人として当然なすべき正しい道 |
| 責 | しなければならないこと |
(旺文社:国語辞典)



技術士法の「義務」とは技術士が守るべきもので、
守らないと刑罰を受けたり、技術士の資格を取り消されたりします。
こちらは技術士法ができた当初から盛り込まれている条文になります。
一方、技術士法の「責務」とは、
そのように行動すべきという技術士に対して責任や任務を自覚してもらうもので、2000年の技術士法の改正の時に追加されました。
ただ最初に3義務があって、その後技術士に求められる環境が変わってきて2つの事項を追加して、言葉を分けたので2責務になったというのが実情ですかね。
いずれにしてもそれら5つの項目は技術士としては守るべきものです。
技術士法3義務2責務について見ていきましょうか。





技術士法の3つの義務は以下ですね。
技術士又は技術士補は、技術士若しくは技術士補の信用を傷つけ、又は技術士及び技術士補全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
技術士又は技術士補は、正当の理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を洩らし、又は盗用してはならない。技術士又は技術士補でなくなった後においても、同様とする。
技術士は、その業務に関して技術士の名称を表示するときは、その登録を受けた技術部門を明示してするものとし、登録を受けていない技術部門を表示してはならない。



また、技術士法の2つの責務は以下ですね。
技術士又は技術士補は、その業務を行うに当たっては、公益の安全、環境の保全その他の公益を害することのないよう努めなければならない。
技術士は、常に、その業務に関して有する知識及び技能の水準を向上させ、その他の資質の向上を図るよう努めなければならない。



責務の方は後で追加されたから「の2」になっているのですね。
「やってはいけないこと」が義務で、
「こうありたい姿」が責務、という感じですね。
義務は法的な意味合いが強く、
責務はマインド的な意味が強い
ように感じました。



では、ここで一つ考えてみましょう。
なぜ、この「公益」と「資質向上」が、あえて責務として追加されたと思いますか?



技術の不正が社会的問題になったりしていて、
「知らなかった」「指示されたから」では済まされなくなり、
技術者はその責任を自覚することが必要ですから、
これらが追加された...のでしょうか。



まさにその通りです。
今でもまだ技術的な不正が繰り返されていますので、
本当はみんなが自覚しなければいけないことなのでしょう。



理系の大学を卒業したり、担当している業務が技術的なことだと、自分は技術者だと思ってしまいますが、
本当はその専門知識を公益のためになるように使う人でないと技術者とは呼べず、
さらにその能力を向上させるように常に努力をしていかないといけないのですね。
技術士試験に合格した人のみが技術者と名乗れるようにした方がいいかもしれませんね。



それはやりすぎだと思いますが、非常に重要なポイントですね。
この技術士法の3つの義務と2つの責務に関係して、
技術士倫理綱領というものがあります。
これが実際にこれらの義務と責務を行う際の指針になります。
これは2011年に改訂された後、2023年にも改定が行われています。
| 前文 技術士は、科学技術の利用が社会や環境に重大な影響を与えることを十分に認識し、業務の履行を通して安全で持続可能な社会の実現など、公益の確保に貢献する。 技術士は、広く信頼を得てその使命を全うするため、本倫理綱領を遵守し、品位の向上と技術の研鑽に努め、多角的・国際的な視点に立ちつつ、公正・誠実を旨として自律的に行動する。 |
| 1(安全・健康・福利の優先) 技術士は、公益の安全、健康及び福利を最優先する。 2(持続可能な社会の実現) 技術士は、地球環境の保全等、将来世代にわたって持続可能な社会の実現に貢献する。 3(信用の保持) 技術士は、品位の向上、信頼の保持に努め、専門職にふさわしく行動する。 4(有能性の重視) 技術士は、自分や共同者の力量が及び範囲で確信の持てる業務に携わる。 5(真実性の確保) 技術士は、報告、説明又は発表を、客観的で事実に基づいた情報を用いて行う。 6(公正かつ誠実な履行) 技術士は、公正な分析と判断に基づき、託された業務を誠実に履行する。 7(秘密情報の保護) 技術士は、業務上知り得た秘密情報を適切に管理し、定められた範囲でのみ使用する。 8(法令等の遵守) 技術士は、業務に関わる国・地域の法令等を遵守し、文化を尊重する。 9(相互の尊重) 技術士は、業務上の関係者と相互に信頼し、相手の立場を尊重して協力する。 10(継続研鑽と人材育成) 技術士は、専門分野の力量及び技術と社会が接する領域の知識を常に高めるとともに、人材育成に努める。 |



技術士倫理綱領には技術士法よりももう少し細かな説明が書かれていますね。
技術士法の3義務2責務は少し漠然としていて、どのようなことがそれにあたるのかわかりにくいものがありましたが、技術士法と技術士倫理綱領を照らし合わせると、もう少し具体的な行動が見えてきますね。
信用を失墜させる行為とは、
客観的で事実に基づいていない情報を使ったり、
公正な分析を行っていなかったり、
欺瞞的な行動を行ったり、
法令等を守らなかったりするということですね。
公益確保というのも、
みんなの安全や健康を守ること、
そして地球環境を守ることなのですね。



技術士法の3義務2責務は、
第一次試験の適性科目でも関係してきますし、
第二次試験の必須科目Iや口頭試験でも聞かれますので、
しっかりとその背景やどのような行動に関係しているのかを頭に入れておいてください。


まとめ
- 技術士法には、技術士が守らなければいけない3つの義務と2つの責務が記載されており、これらは技術士倫理綱領により細かな行動指針として記載されている
| 技術士法の3義務2責務 | 関係する技術士倫理綱領 | |
|---|---|---|
| 義務 | 第44条 信用失墜行為の禁止 | 3.信用の保持 5.真実性の確保 6.公正かつ誠実な履行 8.法令等の遵守 |
| 第45条 技術士等の秘密保持義務 | 7.秘密情報の保護 | |
| 第46条 技術士の名称表示の場合の義務 | 4.有能性の重視 9.相互の尊重 | |
| 責務 | 第45条の2 技術士等の公益確保の責務 | 1.安全・健康・福利の優先 2.持続可能性な社会の実現 |
| 第47条の2 技術士の資質向上の責務 | 10.継続研鑽と人材育成 | |

