はじめに
ツトムさんは技術士第一次試験や第二次試験の試験内容の中で頻繁に出てくるある言葉が気になっていました。それは「技術士の資質能力(コンピテンシー)」という表現です。
これは何なのか、疑問に思い改めて詳細に調べ始め、マナブ先生と一緒に、技術士の資質能力の意味と背景を深掘りしていきます。
今日のテーマ
- 技術士の資質能力(コンピテンシー)とは何ですか?
- コンピテンシーという英語は何を意味していますか?
- 技術士の資質能力が求められている背景は何ですか?
コーチング対話
ツトムさん技術士第二次試験の受験申込みを見ると各問題に
「技術士の資質能力(コンピテンシー)のうち」という言葉が出てきますし、修習技術者に対してもほぼ同じような資質能力が求められていますが、これは何なのでしょうか?
技術士に求められる資質能力とは日本技術士会のホームページに資料がありましたが、以下ですよね。
| 資質能力 (コンピテンシー) | 内容 |
|---|---|
| 1. 専門的学識 | 1) 技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な、技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。 2) 技術士の業務に必要な、わが国特有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。 |
| 2. 問題解決 | 1) 業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、必要に応じてデータ・情報技術を活用して定義し、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。 2) 複合的な問題に関して、多角的な視点を考慮し、ステークホルダーの意見を取り入れながら、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。 |
| 3. マネジメント | 1) 業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的現実性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。 |
| 4. 評価 | 1) 業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。 |
| 5. コミュニケーション | 1) 業務履行上、情報技術を活用し、口頭や文書などの方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザなど多数な関係者との間で、明確かつ包摂的な意思疎通を図り、協働すること。 2) 海外における業務に携わる際は、一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え、現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。 |
| 6. リーダーシップ | 1) 業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに務めること。 2) 海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行に務めること。 |
| 7. 技術者倫理 | 1) 業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、経済及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。 2) 業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守し、文化的価値を尊重すること。 3) 業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。 |
| 8. 継続研さん | 1) CPD活動を行い、コンピテンシーを維持・向上させ、新しい技術とともに絶えず変化し続ける仕事の性質に適応する能力を高めること。 |



技術士の資格は文部科学省の管轄にあり、
文部科学省では日本の科学技術の発展のために方針・政策を検討する組織として科学技術・学術審議会というものがあり、その中の技術士分科会の中で技術士の在り方、技術士試験について議論がされています。
そこで、技術の高度化、統合化等に伴って
技術者に対して求められる資質能力を定めたのですよ。
もとになっているものは
国際エンジニアリング連合:International Engineering Alliance、
略してIEAと呼びますが、
そこが専門職技術者が備えるべき資質能力を定めた
IEA PCプロフィール、つまり専門職のあるべき姿を示すものを作成して、
それを踏まえてキーワードとしてまとめたものです。
IEA PCとの比較表を示します。
表の右の技術士PCの中の初めの番号はツトムさんが示してくれた
技術士に求められる資質能力の番号です。
| 項目番号 | 専門職としての知識・能力(エンジニア) (IEA PC) | 技術士に求められる資質能力 (技術士PC) |
|---|---|---|
| 1 | 普遍的知識を理解し応用する:優れた実践に必要な汎用的な原理に関する高度な知識を理解し応用する。 | 1.1)技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な、技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。 |
| 2 | 特定の国又は地域に関する知識を理解し応用する:自分の活動する国又は地域に特有の優れた実践の基礎となる汎用的な原理に関する高度な知識を理解し応用する。 | 1.2) 技術士の業務に必要な、わが国特有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。 |
| 3 | 問題分析:複合的な問題を明確にし、調査し、及び分析する。 | 2.1) 業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、必要に応じてデータ・情報技術を活用して定義し、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。 |
| 4 | 解決策のデザインと開発:複合的な問題に対する解決策をデザインし、又は開発する。 | 2.2) 複合的な問題に関して、多角的な視点を考慮し、ステークホルダーの意見を取り入れながら、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。 |
| 5 | 評価:複合的な活動の成果及びインパクトを評価する。 | 4.1) 業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。 |
| 6 | 社会の保全:複合的な活動の、合理的に予見できる社会、文化及び環境に対する影響を全般的に認識し、持続可能性保持の必要性に配慮する;社会の保全が最優先事項であることを認識している。 | 7.1) 業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、経済及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。 |
| 7 | 法と規則:自分の活動において、全ての法及び規則の要求する事項を満たし、公衆の健康と安全を守る。 | 7.2) 業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守し、文化的価値を尊重すること。 |
| 8 | 倫理:倫理的に行動する。 | 7.1)…技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。 |
| 9 | エンジニアリング活動のマネジメント:一つ又は複数の複合的な活動の一部又は全体をマネジメントする。 | 3.1) 業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的現実性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。 |
| 10 | コミュニケ―ション:自分の活動の過程において、他の人たちと明瞭にコミュニケーションを行う。 | 5.1) 業務履行上、情報技術を活用し、口頭や文書などの方法を通じて、雇用者、上司や同僚、クライアントやユーザなど多数な関係者との間で、明確かつ包摂的な意思疎通を図り、協働すること。 |
| 11 | 継続研さん:自分の知識・能力を維持し向上するために十分な継続研さん(CPD)を行う。 | 8.1) CPD活動を行い、コンピテンシーを維持・向上させ、新しい技術とともに絶えず変化し続ける仕事の性質に適応する能力を高めること。 |
| 12 | 判断:複合的な活動に当たり、要求事項が競合することや知識の不完全なことを考慮して、複合性を把握し代案をアセスメントする。このような活動の過程で、確かな判断を行う。 | 2.2) 複合的な問題に関して、多角的な視点を考慮し、ステークホルダーの意見を取り入れながら、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。 |



すみません、「PC」とは何ですか?



Professional Competenciesの頭文字です。
ついでに言うと「コンピテンシー」とは「資質能力」の英語ですが、
特定の業務で高い業績や成果を出すための
必要な知識や技術、資質を総称した行動特性です。
2014年に示された「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」の前文には、
「技術の高度化、統合化等に伴い、
技術者に求められる資質能力はますます高度化、多様化している。
これらの者が業務を履行するために、
技術ごとの専門的な業務の性格・内容、業務上の立場は様々であるものの、(遅くとも)35歳程度の技術者が、技術士資格の取得を通じて、
実務経験に基づく専門的学識及び高度の専門的応用能力を有し、
かつ豊かな創造性を持って複合的な問題を明確にして解決できる
技術者(技術士)として活躍することが期待される。」と記載されています。





ありがとうございます。
世界共通の“プロ技術者像”が土台にあるのですね。
IEA PCと技術士PCを対比するとほぼ同じ項目が網羅されていますが、
技術士PCでは5.2)と6、そして7.3)が付け加わっていますね。
5.2)は語学や海外文化といった日本人では問題になっている部分ですね。
特に技術系の人は英語が苦手という人がいますが、
今の時代グローバルに活躍するには
外国語に対して苦手意識を持たないことは重要ですね。
7.3)は倫理の範疇ですのでカバーされているとして、
技術士PCでは6のリーダーシップが大きな項目として付け加わっているのですね。



良い点に気が付きましたね。
IEAでは技術者を3つに分類しています。
➀Professional Engineers、
②Engineering Technologists、
③Engineering Technicians
で、先に示したIEA PCは➀Professional Engineersのものです。
これが技術士に相当するものですが、
日本の技術士はさらにリーダーシップを持つべき資質能力に加えているのです。
「高度な専門知識を持ったプロフェッショナル」であるだけでなく、
「会社・組織・社会を引っ張っていく人」であるということです。



実際に新しいこと、大きなことをやるためには
みんなを統制して導く力が必要ですからね。
それが求められている技術士という資格はますます魅力的で、
是非ともその一員として認められたいです。



この「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」は2014年に作られたということですが、その後、改定はなかったのでしょうか?



良いポイントに気がつきましたね。
実は2023年(令和5年)に改訂がされ、改訂版コンピテンシーとなりました。先ほど示した表の内容は改訂版コンピテンシーです。
その詳細はまた後ほどしますが、この改訂版コンピテンシーの試験への適用時期は2026年(令和8年)からになっていますので、これからはこの改訂版コンピテンシーを頭に入れて受験準備をする必要があります。



時代とともに、求められる資質能力も変わってくるのですね。


まとめ
- 技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)には専門的学識、問題解決、マネジメント、評価、コミュニケーション、リーダーシップ、技術者倫理がある
- 「コンピテンシー」とは「資質能力」の英語で、特定の業務で高い業績や成果を出すための必要な知識や技術、資質を総称した行動特性
- 技術士PCは IEA PCを参考に作られ、技術者に求められる資質能力がますます高度化、多様化する中で実務経験に基づく専門的学識及び高度の専門的応用能力を有し、かつ豊かな創造性を持って複合的な問題を明確にして解決できる技術者としてのあるべき姿である

