登場人物

ツトムさん
機械工学科を卒業。32歳
メーカに勤めており、浄水場向けの装置の開発を行っている。
技術士資格に興味あり
マナブ先生
機械工学の修士課程修了。58歳
精密機械メーカでやマーケティング課長や開発部長や品質保証センター長を経験し、現在は技術士事務所でコンサルタントを行っている。
機械と総合技術監理の技術士資格を持っている。
テクノロジー・コーチングのブログで技術士試験などの情報発信も行っている。

はじめに
ツトムさん自分は理系の大学を出て、メーカーに就職して、今は新製品開発の設計に携わっている。
けれど……自分は技術者として、どのくらいのレベルにいるんだろう?
このまま、ただ目の前の仕事をこなしていくだけでいいのだろうか?
そんな思いを抱えながら、ツトムさんはインターネットで「技術者」「エンジニア」「テクノロジー」と検索していくうちに、ある言葉が目に留まった。
——「技術士」。



弁護士や弁理士、税理士はよく聞くけれど……
「技術士」って、いったい何なんだろう?
調べていくと、国家資格であること、難関試験であること、
そして「技術者の最高峰」とも言われていることが分かってきた。



——でも、ネットの情報だけではピンとこない。
実際に技術士を持っている人の話を聞いてみたい。
そう思ったツトムさんは、技術士に関する情報を発信しているマナブという人物に思い切って連絡を取り、直接会うことになった。
今日のテーマ
- 技術士とは何ですか?
- 技術士になると何ができますか?
コーチング対話



今日はお時間をいただき、ありがとうございます。



いやいや、積極的にコンタクトをしてくれる人を私は大歓迎ですよ。
ツトムさんは、今日は何を一番聞きたいと思って来ましたか?



……正直に言うと、
「技術士」って、どんな存在なんでしょうか?
そこがよく分からなくて。



なるほど。
では逆に聞いてもいいですか。
ツトムさんは、技術者としてどんな状態になれたら理想だと思っていますか?



うーん……
自分の専門分野では、胸を張って「任せてください」と言える。
それと、会社の中だけじゃなくて、もう少し広い視野で仕事ができたらいいな、とは思います。



いいですね。
実は、昔 経団連会長を務めた土光敏夫さんが、
「技術士の活躍に期待する」という文章の中でこんな言葉を残しています。
「学理を開発した学者には博士という称号が与えられる。
これに対し、技術を産業界に応用する能力を有すると認められた技術者には、技術士という称号が与えられる。」
この言葉を聞いて、どう感じますか?



……博士が理論の専門家だとすると、
技術士は“現場で使える技術のプロ”という感じがします。



その理解でいいと思います。
技術士は、国が「この人は、科学技術を実社会で使いこなせる技術者だ」と認めた資格です。
端的に言うと、技術のプロフェッショナルということです。



でも……。それはいろいろなところに載っていますが、例えばメーカに勤めていてそこで開発業務を行っている技術者とどう違うのでしょうか?
例えば、うちの上司は業界トップクラスの技術者だと思います。
けれど、技術士ではありません。
技術士と、そういう現場の優秀な技術者は、何が違うんでしょうか?



いいところに気づきましたね。
ツトムさん自身は、どう違うと思いますか?



……専門性の深さ?
それとも、資格を取るかどうかの意識の差でしょうか。



どちらもありますね。
技術士になると、会社の肩書きではなく、個人としての技術力で評価される場面が増えます。
さらに、国際的な技術者資格の相互認証も行われていて、
技術士資格は国際的な技術者登録制度にも登録できるんですよ。
つまり、日本という枠も超えて活躍できるんです。



会社や日本の枠を超える……ですか。
確かに、それは今まで考えたことがなかったです。





ところでツトムさん、弁護士や税理士はよく知られているのに、
なぜ技術士はあまり知られていないと思いますか?



……技術の仕事は、資格がなくてもできるから、でしょうか?



その通りです。
技術士でなくても技術の仕事はできます。
技術士資格が必要とされる業務もありますが、
ほとんどの業務はスキルさえあればできます。
一方で弁護士の仕事は弁護士資格を持っていないとできないので
みんな必死になって弁護士資格を取ろうとするわけです。



それなのにわざわざ難しい試験に合格してまで技術士の資格を取ろうとするのは、よほどの努力家ということですね。



だからこそ、あえて難しい試験に挑戦する人は、
「自分の実力を客観的に確かめたい」
「自分は何者なのかをはっきりさせたい」
そんな思いを持っていることが多いですね。



試験に合格したら、それで終わりではないんですか?



技術士は登録制ですので、技術士第二次試験に合格して、所轄官庁である文部科学省に登録することで技術士を名乗ることができます。
しかし、そこからがスタートです。
登録すると日本技術士会に加入することができて、
技術だけでなく、社会や人との関わりについて考える機会が増えます。



日本技術士会のホームページにもいろいろと情報が載っていますね。
社会活動にも力を入れていて地域への防災教育の実施や、
子供たちへの理科教室の提供などもやっているのですね。
司法支援活動という言葉もありましたが、技術と司法というとあまり関係なさそうですが、
技術者がそんなところまで関わるんですね。



ええ。
最近は高度な技術知識を持って対応しないといけない裁判事例が増えてきています。
そのため専門家による訴訟手続きへの協力が要請され、
日本技術士会でも最高裁判所との協議を通して、
技術士が司法支援を行うための体制を作っています。
司法支援技術士として登録をすると鑑定人、専門委員または
調停委員の依頼が来るんです。私は登録をしていないので、細かなことはわかりませんが。



……技術士って、
専門知識だけじゃなくて、社会のこと全般に興味がある人がなれるのでしょうね。
名刺に「博士」や「PhD」と肩書を入れている人はいますが、
技術士も名刺に記載することはできるのですか?



企業によってルールが決まっているところがあるようですね。
私は「技術士(機械、総合技術監理)」と記載していますよ。
たまに名刺交換をしたときに技術士の記載がある人と会うと、話が盛り上がりますね。



国に認められた技術のプロフェッショナルの証明ですからね。



技術士になると、これだけのことができるのでその分責任も重く、
技術士には責務もあります。



試験に合格するだけじゃなく、その後もやらなければいけないことがあるんですか?



責任を持つということかな。
それだからみんなも安心して技術士と仕事ができるのですよ。
ところでツトムさん。
最初に話してくれた「このままでいいのか」という気持ち、
今はどう感じていますか?



……少し、霧が晴れた気がします。
自分がどこを目指したいのか、考えてみたくなりました。
もう少し技術士について教えていただけますか。





いいですよ。
ツトムさんは今まで技術者としてがむしゃらにやってきたと思いますが、
技術士試験を受けるということで自分自身の技術の棚卸ができます。
これまでの自分の技術人生を振り返る試験です。
次は、試験について話をしましょう。



ぜひ、お願いします!
まとめ
- 技術士とは、国によって科学技術に関する高度な知識と応用能力が認められた技術者で、科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威ある国家資格を持っている人 = 技術のプロフェッショナル
- 技術士試験はゴールではなく、技術者人生を棚卸しするスタート地点。視野を広げ、自分の技術と向き合うプロセス
- 技術士になると会社の枠を超えて、社会活動などに携わったり、国境の枠も超えて活動の幅が広がる

