(3)技術士に求められる資質能力(コンピテンシー):1.専門的学識(前半)

PE-Competency
目次

登場人物

Engineer skill

ヒトミさん

地方の大学の機械工学の学部、修士卒業。29歳
学生時代はロボットの研究をしていた。
大学院修了後、精密機器メーカに入社し、研究開発センターに配属されセンサーの研究開発を行っているが、自分が技術者としてどの方向に向かえばいいのか悩んでいる。

マナブ先生

機械工学の修士課程修了。58歳
精密機械メーカでやマーケティング課長や開発部長や品質保証センター長を経験し、現在は技術士事務所でコンサルタントを行っている。
機械と総合技術監理の技術士資格を持っている。
テクノロジー・コーチングのブログで技術士試験などの情報発信も行っている。

技術士コーチ

はじめに

前回の対話で、ヒトミさんは
技術者に求められる資質能力(コンピテンシー)が、
単なる知識ではなく「価値を創るための力」であることに気づき始めました。

今回は、その最初の要素である 「専門的学識」について、さらに深く考えていきます。

今日のテーマ

  • 技術士に求められる「専門的学識」とは何ですか?
  • 「知識がある」ことと「価値を生む」ことの違いとは何ですか?

コーチング対話

マナブ先生

最初は1.専門的学識についてです。
「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」に書かれている文章を見ましょう。

技術士に求められる資質能力(コンピテンシー):
1.専門的学識
  • 技術士が専門とする技術分野(技術部門)の業務に必要な、技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
  • 技術士の業務に必要な、我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。
マナブ先生

これを読んで何が分かりますか?

ヒトミさん

まずは、「技術部門」とか「選択科目」といった言葉が何なのかと思いました。

マナブ先生

そうでしたね。これは技術士に向けて書かれている文章ですので、その説明が必要でしたね。
技術士には、機械部門や電気電子部門等、21の技術部門があり、それぞれの部門でさらに細かな専門分野に分かれていてそれを選択科目と呼んでいます。

マナブ先生

それでは再度質問です。
これを読んで何が分かりますか?

ヒトミさん

技術者として専門知識があることは当然のことだと思いますが、
それ以上は…。

マナブ先生

それでは、
「専門知識がある技術者」と
「優れた技術者」は同じだと思いますか?

ヒトミさん

…違う気がします。
専門知識があっても、それを使えない人もいますよね。

Technology Coaching refresh
マナブ先生

いいですね。では、違いはどこにあると思いますか?

ヒトミさん

使えるかどうか…でしょうか。
実際の問題に適用できるかどうか。
そういえば「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」には「専門知識を理解し応用すること」と書かれていますね。

マナブ先生

重要な点に気がつきましたね。
そうです。
「専門知識を持っている」だけではなく、
それを「理解し」て、「応用する」ことが求められています。
例えば、流体力学の例でいうと、基本的な定理として「ベルヌーイの定理」があります。
\[
p+\frac{1}{2}\rho v^2 +\rho gh = 一定
\]
この式だけを知っていても役には立ちません。
その内容を理解していないといけないのです。
なぜ、エネルギー保存則になるのかや、
どのような条件の時にこの定理が使うことができるのか、
といったことです。
その理解があることにより、
実際の配管の場合はさまざまな損失があるので
それらを考慮しなければいけないだとか、
渦や乱流についても考察をしなければいけないなど
実際に応用する時に注意すべき点が分かるのです。

ヒトミさん

知っているだけだと、そのまま使おうとするけど、
理解していれば
「この条件では使えない」とか、
「損失を考慮しないといけない」って気づけるのですね。

マナブ先生

その通りです。
ヒトミさんの専門ではどのような例が考えられますか?

ヒトミさん

ロボット制御において基本になる制御として
PID制御というのがありますが、
このPは応答性、
Iは定常偏差除去、
Dは振動抑制です。
これらの性質を理解した上で、
実際にロボットを動かすときには振動が発生したり、
思ったような速度で動かない時には、
どの要素が影響しているのかや、
サンプリング周期やセンサーやモータの特性なども
考慮に入れることで、
安定してロボットを動かすことができるようになります。

技術士コーチング
マナブ先生

いい考察です。
知識があることは重要で、
スタートラインではありますが、
本当に価値を生むのは
「どの場面で、どう使うのかを判断できる能力」です。
それが「理解し応用すること」なのです。

ヒトミさん

式や理論を覚えているだけじゃなくて、
なぜそうなるかが分かっている状態…
ということですね。
そうなることによって
状況に応じて知識を選び、
組み合わせ、
判断する
ことができるのですね。
当然のように思えますが、
そのようにやらずに知識の表面的な部分だけにフォーカスしてしまい、
その根底にあるものを忘れてしまいがちですね。

マナブ先生

「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」が2014年に検討された時には、
国際的な技術者教育・資格に関する組織である
IEA(International Engineering Alliance)が発表している
IEA卒業生としての知識・能力の知識プロフィールが
参考にされていますので、その内容を見てみましょう。
これはIEAの大学を卒業する段階で身に着けておくべき知識についてまとめてあります。

No.知識プロフィール
WK1当該専門分野に適用できる自然科学(例えば、計算ベースの物理)の体系的かつ理論ベースの理解。
WK2当該専門分野に適用可能な解析やモデル化を支援する概念ベースの数学、数値解析、統計学、一般的な内容のコンピュータ・情報科学の体系的知識。
WK3当該専門分野で必要なエンジニアリング基礎(専門基礎科目)に関する体系的かつ理論ベースの知識の形成。
WK4当該専門分野における確立した実務領域に必要な様々な理論的枠組及び知識体を与える専門の知識;そのほとんどは当該専門分野における最先端のものである。
WK5一つの専門分野におけるエンジニアリング・デザインの基礎となる知識(法規制、各種基準類、設計手順、経験や設計事例から得られた情報等)。
WK6当該専門分野において一般又は法的に認められた技術士の業務又は技術領域に関する知識。
WK7社会における科学技術の役割と、当該専門分野内で技術士業務実践に関して確認されている諸問題の理解:技術士の倫理及び公共の安全への責任;技術士業務の経済、社会、文化、環境及び持続性への影響などの理解。
WK8当該専門分野の研究文献における精選された知識の理解。
ヒトミさん

今はどんどんと新しい技術が生み出されている一方、
より複雑な問題への対応が必要になってきていますよね。
この幅広い知識を習得し、理解した上で、
それらを応用することが大切なのですね。

マナブ先生

そうですね。
持続可能性や多様性にも対応していかなければなりません。
専門技術知識だけではなく、
関連する政治や経済、法律などの
社会技術の知見に基づく課題解決が
求められる場面が多くなります。
それが、この専門的学識の2つ目に記載してあることです。

まとめ

あなたも考えてみましょう

  • 自分が関わる業務において、自分の専門知識は役に立っていますか?
  • 自分が持っている専門知識を実務に応用する時、気を付けていることは何ですか?

次は

次回は今回の続きとなる専門的学識の後半です。
技術士に求められる専門的学識のもう一つ重要な要素である
「法令・制度、そして社会・自然条件を理解し応用すること」
についてさらに深く学んでいきます。

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