(4)技術士に求められる資質能力(コンピテンシー):1.専門的学識(後半)

PE-Competency
目次

登場人物

Engineer skill

ヒトミさん

地方の大学の機械工学の学部、修士卒業。29歳
学生時代はロボットの研究をしていた。
大学院修了後、精密機器メーカに入社し、研究開発センターに配属されセンサーの研究開発を行っているが、自分が技術者としてどの方向に向かえばいいのか悩んでいる。

マナブ先生

機械工学の修士課程修了。58歳
精密機械メーカでやマーケティング課長や開発部長や品質保証センター長を経験し、現在は技術士事務所でコンサルタントを行っている。
機械と総合技術監理の技術士資格を持っている。
テクノロジー・コーチングのブログで技術士試験などの情報発信も行っている。

技術士コーチ

はじめに

前回の対話で、ヒトミさんは
「専門的学識とは、知識を理解し応用する力である」ことに気づきました。

しかし、技術士に求められる専門的学識には、もう一つ重要な要素があります。
それが、
「法令・制度、そして社会・自然条件を理解し応用すること」
です。 今回は、その意味を深く考えていきます。

今日のテーマ

  • なぜ技術者に法令や制度の理解が必要なのですか?
  • なぜ社会や自然条件等を考慮しなければならないのですか?

コーチング対話

マナブ先生

先ほど、「知識を理解し応用すること」について考えましたね。
今度はもう一つの視点です。
それでは、1.専門的学識の2つ目に記載してあることについて考察していきましょう。

ヒトミさん

「技術士の業務に必要な、我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。」ですね。

マナブ先生

先ほどと同じ質問をしますが、
これを読んで何が分かりますか?

ヒトミさん

科学技術理論というは、物理法則に従ったものですが、
実際にそれを応用する場面では、
社会的に求められていることを理解した上で
業務を行わなければならないということでしょうか。

マナブ先生

ヒトミさん、技術はどこで使われるものだと思いますか?

ヒトミさん

社会の中…ですね。

技術士コーチング
マナブ先生

では、その「社会」には
どんなルールがあるでしょう?

ヒトミさん

法律や規制があります。

マナブ先生

そうですね。
ではここで質問です。
もし技術的に完璧な製品ができたとしても、
その法律を満たしていなかったらどうなるでしょう?

ヒトミさん

使えませんね…。
販売もできないと思います。

マナブ先生

では、なぜ法律があるのでしょう?

ヒトミさん

安全や環境を守るため…でしょうか。

マナブ先生

その通りです。
ではもう一歩考えてみましょう。
「法律を守る」というのは、最低限の条件でしょうか?
それともそれ以上の意味がありますか?

ヒトミさん

…最低限の条件ですね。
技術は社会の中で使われますので、
その社会の秩序を保つための法規制に従うことは
安全や環境を守るために最低限の条件となります。

マナブ先生

技術的には可能であっても、
法的に禁止されていることは社会的に受け入れられませんよね。
具体的にはどのようなことが考えられますか?

ヒトミさん

テレビで見たことがありますが、
ヒトのES細胞を使って研究を行う場合は
倫理審査委員会への申請をして許可をされないとやってはいけないということがあります。

マナブ先生

そうですね。ES細胞を使った研究は
人類にとって非常に重要ではありますが、
一方でES細胞はヒトの胚になり得るので、
取り扱いを間違えると生命を操作するということにつながりかねませんので、
各国で法律を作って制限をしています。
では、法律を知らなかった場合はどうなるでしょう?

ヒトミさん

…責任を問われますね。
知らなかったでは済まされないと思います。

マナブ先生

その通りです。法律は知りませんでしたと言うことも許されません。
では具体的に考えてみましょう。
例えば排水処理設備を設計する場合、
地域の基準を満たしていなかったら
何が起きるでしょう?

ヒトミさん

環境に影響が出ます。
例えば水質が悪化して、生態系にダメージが出るかもしれません。

マナブ先生

では、その結果は「技術の問題」でしょうか?
それとも「社会の問題」でしょうか?

ヒトミさん

…両方ですね。
でも、最終的には「社会の問題」になります。

マナブ先生

いい視点です。
では次の問いです。
「法律を守れば十分」でしょうか?

ヒトミさん

…そうでもない気がします。
法律に書かれていないことでも、
配慮が必要なことがありそうです。

マナブ先生

例えばどんなことでしょう?

ヒトミさん

文化とか…でしょうか。

マナブ先生

いいですね。
では、文化を無視した技術はどうなると思いますか?

ヒトミさん

受け入れられないと思います。
反発が起きるかもしれません。

マナブ先生

その通りです。その地方特有の文化というものの重要です。
効率性を優先させて、文化を破壊する行為は
許されるものではありません。
具体的な例は思い浮かびますか?

ヒトミさん

アメリカのダコタ・アクセス・パイプラインの事例を聞いたことがあります。
ノースダコタ州の原油生産地からイリノイ州の石油集積地までのパイプラインを建設するときに、森林破壊や生態系の影響も懸念されましたが、最も大きな論点になったのは、パイプラインが先住民が神聖な場所として守ってきた土地を通るということでしたね。

マナブ先生

では、そのプロジェクトの
問題は何だったのでしょう?

ヒトミさん

技術ではなくて…
文化や価値観を十分に理解していなかったことだと思います。

マナブ先生

その通りです。
ではここで重要な問いです。
技術者は「何を最適化すべき」でしょう?

ヒトミさん

…性能や効率だけではなくて、
社会に受け入れられることも含めた「全体の価値」だと思います。

マナブ先生

素晴らしいですね。
技術者はいろいろな知識を持つとともに、
その背景を原理だけでなく、
社会的な観点からも理解し、応用することができないといけないのです。

ヒトミさん

それが「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」の
「専門的学識」なのですね。
技術士という資格にも少し興味が出てきました。

まとめ

  • 優れた技術者は「技術」ではなく「価値全体」を設計している

あなたも考えてみましょう

  • あなたの業務で、法律や規制をどの程度意識していますか?
    それは「形式的」ですか、それとも「意味」を理解した上で”ですか?
  • あなたの技術は、社会や文化にどのような影響を与えていますか?

次は

次回は技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)の
次の項目となる問題解決の前半です。
問題解決のプロセスについて学びます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次