登場人物

ヒトミさん
地方の大学の機械工学の学部、修士卒業。29歳
学生時代はロボットの研究をしていた。
大学院修了後、精密機器メーカに入社し、研究開発センターに配属されセンサーの研究開発を行っているが、自分が技術者としてどの方向に向かえばいいのか悩んでいる。
マナブ先生
機械工学の修士課程修了。58歳
精密機械メーカでやマーケティング課長や開発部長や品質保証センター長を経験し、現在は技術士事務所でコンサルタントを行っている。
機械と総合技術監理の技術士資格を持っている。
テクノロジー・コーチングのブログで技術士試験などの情報発信も行っている。

はじめに
ヒトミさんは、入社して5年。
研究開発の仕事にも慣れ、成果も出している。
しかし、ふと立ち止まったとき、こんな思いが頭をよぎる。
ヒトミさん私は今まで、それなりに成果を出してきたと思うけど、
それって上司に言われたことをやってきただけのような気がする。
自分の価値って何なんだろう…?
実は評価されているのは言われたことを納期までにこなしているというだけなのかも。
自分の強みとは何?
そして、その思いは次第に深まっていく。



上司はもっと先を見て話しているのに、
私は目の前のタスクをこなすだけ…。
もっと先を見て、自分自身が目指す方向を探さなければいけない。
技術者としてレベルを上げたい。
でも、
そもそも「技術者に求められるもの」って何なんだろう…?
ヒトミさんはインターネットでいろいろと調べる中で、
テクノロジー・コーチングのブログを書いている技術士のマナブ先生が
何か教えてくれそうな気がして、直接コンタクトを取ることにした。
今日のテーマ
- 技術者には何が求められているのですか?
- その求められているものを達成するためには何をすればいいのでしょうか?
コーチング対話



はじめまして。
わざわざ来ていただきどうもありがとうございます。



こちらこそ、お時間を取っていただきどうもありがとうございました。
メールでのやり取りという方法もありましたが、
直接会ってお話をお聞きしたかったもので。



社会に出て数年経ち、ヒトミさんと同じような悩みを持つ人は多く
います。最近は、数年で転職してしまう人もいますよね。



私は今の仕事や職場には満足で、
転職したいとかそのようなものではなくて、
ただ自分が技術者としてこれからやっていくには
何が求められているのかを知った上で、
それを達成するために努力をしていきたいと思っただけです。



それはいい心がけです。
早い段階でそのことに気がつければ、
より早くハイレベルな技術者になりますからね。
ヒトミさんの悩みは悪いことではなく、
むしろ成長のサインですね。
自分自身、それを考える中で何が変わったと思いますか?



「会社に何をしてもらうか」から
「自分が何を提供できるか」を考えるようになりました。





素晴らしいですね。
それは大きな変化点ですね。
ヒトミさんが感じている「違和感」について、
もう少し教えてもらえますか?



はい…。
仕事は順調なのですが、
自分で考えて動いているというより、
指示されたことをこなしているだけのような気がしていて…。



なるほど。では少し視点を変えてみましょう。
ヒトミさんは今の仕事で、
会社や社会にどんな価値を提供していると思いますか?



価値…ですか?
センサーの性能を上げたり、製品の品質を良くしたり…
そういうことだと思います。



いいですね。
では、その価値は「誰にとっての価値」でしょう?



えっと…
顧客やユーザー、
それから会社にとっての価値ですね。



その通りです。
ではもう一歩進めてみましょう。
その価値を「自分の意思で設計している」と感じますか?
それとも「与えられている」と感じますか?



……与えられている、
ですね。



そこが今のヒトミさんの大きな気づきですね。
では、もし「自分で価値を設計できる技術者」になるとしたら、
どんな力が必要だと思いますか?



うーん…
問題を見つける力とか、
先を考える力…でしょうか?



いいですね。
かなり本質に近づいています。
ヒトミさんは「技術士」という国家資格を知っていますか?



「技術士」という資格については、
マナブ先生のブログを見るまでは知りませんでしたが、
技術のプロフェッショナルにもなってみたいと思います。





実は技術士制度の中でも、
技術者とはどのような能力を持っていて、
どのような資質を備えているべきか
について議論がされているんですよ。
文部科学省の中に科学技術・学術審議会というのがあり、
その中の技術士分科会で定期的に議論されています。



技術者に求められることを
国として議論しているんですね。



今後の科学技術人材政策の方向性や
産業・科学革新人材の育成・確保ということで、
技術者だけでなく科学者も含めた人材についての議論です。
このような議論がされているのはなぜだと思いますか?



日本経済の低迷、
特に産業分野で、アメリカや中国から大きく後れを取ってきているからでしょうか?
日本は天然資源が少なく、土地も狭いので、
科学技術や人材が国にとって大きな宝になっていますが、
それに陰りが見えるからでしょうか?





その通りです。
そして、科学技術人材の育成を
どのようにするのかが議論されています。
科学技術人材育成について
どのような観点で議論されていると思いますか?
まずはヒトミさんが大学院生だった時のことを
振り返ってみてください。
日本の科学技術人材について、
どのような課題があると感じていましたか?



大学の研究室にいる時には、
教授は研究費がないと嘆いていましたし、
博士課程に進む人も少なかったですね。
そして研究を支えるスタッフも
海外の研究機関に比べると少ないと言っていました。
また、そもそも理系に進む女性が少ないのは
大きな問題だなと感じていました。



かなり核心をついた答えですね。
非常に重要なポイントで、まさにそれらが審議会の中で議論されています。
では、そうした課題を解決するために、
「どのような技術者」が必要だと思いますか?



単に技術ができるだけではなくて…
周りを巻き込んだり、価値を作ったりできる人でしょうか?



まさにその通りです。
そのようなことを体系的に整理するために、
国が認める技術の最高資格である技術士に求められる資質能力・コンピテンシーがどうあるべきかという議論が技術士分科会の中で行われました。



コンピテンシー…
ですか?





はい。では、ヒトミさんに質問です。
「優れた技術者」とは、どんな人だと思いますか?



技術力が高い人…だけではなくて、
課題を解決して、みんなを引っ張ることができる人、
でしょうか。



いいですね。
では、その人はどんな行動を取っているでしょう?



自分で考えて、
周りと協力して、
最後までやり切る…?



素晴らしいです。
それがまさにコンピテンシーです。
技術者に求められるのは、
・技術力
・問題解決力
・コミュニケーション
・リーダーシップ
などを組み合わせて、価値を生み出す力です。
では、ヒトミさんが今から一歩進むとしたら、
何から始められそうですか?



「価値を生み出す力」ですか…
まずは…
自分の仕事で「何の価値を出しているのか」を
意識してみます。
そして、その価値を自分で考えるようにしてみます。



とても良いですね。
それが「指示をこなす技術者」から
「価値を創る技術者」への第一歩です。


まとめ
- 技術者に求められるのは、単なる技術力ではなく「価値を創出する力」である
- そのためには、自分の仕事の目的や価値を考え、自ら設計する姿勢が重要である
- コンピテンシーとは、そのために必要な行動特性の集合である
あなたも考えてみましょう
- あなたは今、自分の業務でどのような「価値」を提供していますか?
- 今の国の状況を見て、技術者として取り組まなければならないことは何だと思いますか?

